目的設定には型がある
※第1章の要約をまだ読んでいない方は、先に目を通しておくことを勧める。
今回は目的の定め方を考えていく訳だが、何か身構える必要は全くない。目的設定は誰もが普段行っていることだからだ。
目的の翻訳と設定こそがリーダーの仕事だ
ここで日常とビジネスでの目的設定の違いは「個人か組織かの違い」と言い換えられる。そして組織での目標設定には2つの特徴がある。①目的が本来バラバラな個人を一組織に方向づける、②組織の階層ごとに階層化された目的が存在する。
①について、目的が価値観や志向の異なる個人を束ね共通軸となることを意味する。②については、会社全体の目的を定めるCEOや役員もいれば、より高い売上を達成する目的を持つ営業部もある。階層化された目的を各部門が達成し成果が上へと積み重なることで組織全体の目的が実現されるのだ。この構造が第1章で見た3層ピラミッド構造と似ているのは偶然でなく、本質的な一致である。

上記の②を深慮すれば、組織で目的を設定する際における「上位目的や下位目的を把握し一貫性を意識する」重要性が浮き彫りになる。第1章でも述べたように「何のために」「どのように」の関連が切れてしまっては最上位の目的は達成されにくくなってしまう。また、リーダーは持ち場を超えて組織を俯瞰的に見る能力があって初めてトップとボトムを一貫して接続させる目標設定が可能になる。
上位目的と下位目的を繋げる時に注意すべきは、その間に隔絶があるということだ。隔絶がありメンバーが上位目的を十分に理解できていない状態ではチームは動き出せない。この時に重要なのが、リーダーが上位目的を正確かつ十分に翻訳するということだ。
翻訳とは、上位目的の意図をリーダーが理解して現場に向けリーダー自身の言葉で説き直すということだ。翻訳が正確でないとチームの働きは上位目的に寄与しなくなる。翻訳が十分でないとメンバーは何から動き出して良いか分からなくなり、目的に繋がらない行動を取ることとなる。翻訳は現場にいるミドルクラスのリーダーに最も必要なスキルの1つだと言える。
目的設定の4指標 -空間軸・時間軸・使命・意志-
ここからは具体的な目的設定技法を説明していく。最初に明確にすべきは、どのレベルで目的を設定すべきかである。目的は相対的存在ゆえ、抽象的すぎても個別具体的すぎてもいけない。結論、目的のレベルは組織における自分達の組織の階層レベルに合わせれば良い。あなたが課長級の中間管理職であれば、上位目的を加味した上でポジション相応の目的を設定するのだ。
次に目的設定軸として有効なのは時間軸である。打ち立てる目的がどれほどの期間を射程にしているかにより目的のスケールは変わる。数週間のジョブの目的であれば実務的に、数年単位のジョブの目的は事業の方向性に関わる内容になるであろう。
では目的を設定するのに適切な時間軸はどう決めれば良いか?実はここでも自身のポジションが鍵になる。極端な話をすると、係長級のリーダーが数十年単位の目的を設定するのはズレている。これは嘆くことではなく、組織の中でその時間軸で目的設定をできるのはあなただけだと言える。現在の自身の空間軸(ポジション)と時間軸で目的が綺麗に作れるようになったとき、あなたは一階級上のリーダーに相応しいと言える。これこそが組織における成長である。
上では空間と時間の2軸によって目的設定のフレームワークを設定した。客観的なフレームワークがあっても、主観的な動機がなければ目的は作れない。実際に目的を生み出す力の源泉には次の2つがある。それが使命(すべき)と意志(したい)である。使命はあるべき姿から外れた問題に対する動機、意志は至急に困ってはいないが何か新しいことを始めたいという意欲である。
目的を設定する上で能力(できる/できない)はひとまず考慮しなくて良い。なぜなら能力的評価は先入観に依存するため、貴重な目的の芽を尚早に摘んでしまうからだ。また能力は手段に過ぎないため、後から高めることも可能である。目的設定においては能力は考えず、使命と意志からゼロベースで考えるべきである。
空間軸、時間軸、使命、意志。4つのキーワードは理解できた。最後に目的そのものを生み出すのは「”何のため”を腹落ちするまで問い続ける」ことである。問題解決は一般に、大きな問題を小さい問題に分けて解決する分析型の手法をとる。一方で目的はピラミッド構造の頂点であるため、細かく分けると遠ざかってしまう。
では目的を生み出すにはどうするか。答えは「総合思考」である。ロジカルシンキングで多用される分析思考は順を追って説明できる方法論である一方、総合思考は言葉で表し難い暗黙知である。映画を観て主旨を探す思考に近い。リーダーとして目的を見つけ出すのは総合思考によるものだ。
「何のために」を問い続けて目的を割り出すのが正攻法であるが、解が出ないときは「それが無ければどうなるか」と考えると良い。
目的設定の“型”
STEP1 仕事の上位目的と背景を押さえる
目的設定で最初に押さえるのは上位目的が何か、である。上位目的と一貫して繋がるように目的を作成すべきと先に述べたが、上位目的の設定背景を理解する必要がある。背景を理解して初めて目的を把握したと言える。
STEP2 空間軸と時間軸で目的を限定する
目的設定のフレームワークとして自身の空間軸(ポジション)と時間軸を押さえる。具体的には上で書いた通りである。
STEP3 使命と意志を基にブレストする
STEP2で決めたフレームワークのみを遵守し、使命「どんな状態にすべきか」と意志「何を成し遂げたいか」を突き詰めて目的を決めていく。ここはクリエイティブな総合思考であるため「何のために」と「それが無ければ」を思い浮かんだ端から書き出していく。抽象的な思考を行う場合は意識して紙に書き込んで具体化するのが良い。
どこまで「何のために」を突き詰めるか。それは貴方が腹落ちするまでだ。「本当に?」「もっとあるのでは?」という違和感が消えるのが真の目的発見のサインである。
STEP4 上位者に確認を取る
目的を自分で決めたら、具体的な仕事に入る前に自分の目的の筋が良いか上位者に確認を取るべきだ。大きなメリットが2つある。第一に空振りを避けられる。目的を説明すれば上位者も生み出される価値を予想でき、上位目的に貢献するかを判断できる。価値はそのまま仕事のパフォーマンスであるため、相手も自分を評価しやすくなる。
第二に上位者のセンスを取り込める。上位者は自分の目的設定フェーズをクリアし、より高い視座で目的設定を行なっている人間だ。故に上位者の目的設定の感性を間近で見ることは、今回の目的が洗練されるだけでなく自身の目的設定能力の向上に役立つ。次はさらに洗練された目的を提示でき、上位者との擦り合わせ時間も減る。そのうち「完璧」の一言となり、この時あなたは一段階上のリーダーの資質がついたと言えるだろう。
目的は仕事の到達点であり、ここがズレていては絶対に仕事は報われない。目的について上位者と擦り合わせが完成していない中途半端な状態で仕事を始めないことだ。
目的設定は組織を強化する
なぜ目的設定は重要なのか。それは、目的が変わると目標が変わり、手段が変わるからである。つまり日常的な行動ひとつひとつを司るのが目的なのだ。目的を問い続けるチームのみが成果を発揮し、本質的な変革を成し遂げるのだ。
目的が正確で腹落ちするものであれば、チームメンバーの動きも変わり、組織は強くなっていく。成り行きの変化を超え、目的はチームの将来像さえ変えてしまう。この意味で目的はまさに仕事の生命線である。
【参考図書】
戦略コンサルタントが大事にしている 目的ドリブンの思考法
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