前回は5つの基本動作の1つ目である認知について確認した。今回の話題は判断である。前回の認知の要約は以下で確認してほしい。
また、読んでいない諸氏は手段の概説も先に読んでおくことをおすすめする。

判断は情報の不完全性を補完する
チームメンバーから判断を求められたり上司に判断を求めたりするとき、そこに生まれるのは「することとしないことを分かつ」という行為だ。判断における最低限のアウトプットは「することの明確化」である。「A案かB案どちらが良いか」と判断を求められたとき、最低限行うべきは「A案でいこう」とクリアに答えること。これを行えない回答ははぐらかしである。
「することの明確化」が最低限とすれば、「しないことの明確化」は+αのアウトプットである。「A案でいこう」と言われたとき、相談した側は他はしなくて良いか不安になる。ここでリーダーが「他の問題は真因に刺さらないからやらなくて良い」と言えれば、「しないこと」はネガティブではなくポジティブな取捨選択となる。
全ての情報が完全に揃って100%確実な判断が下せる場面など、現実においてはほとんど存在しない。だからこそリーダーの「判断」が求められるのである。「することとしないこと」の意思決定は不完全さを埋められるとも言える。
目的・目標軸で判断を行う
判断にも良い判断と悪い判断がある。これは単純に、本来あるべき対応と実際の判断とが噛み合えば良い判断であり、ズレれば悪い判断となる。「すべきことをする」が良い判断というのは自明であろう。機会損失を避け価値創出が可能であるからだ。「すべきでないことをしない」というのも同じくらい重要である。無駄な投資を減らし、損失を回避できるからである。
判断を優れたものにするためには、判断の質とスピードを両軸で向上していく必要がある。判断の「質」とは、目的・目標の達成に貢献するかである。スピードはチームの生産性(価値創出)に大きな影響を及ぼす。判断が遅れたぶんチーム全体の動きが止まり、機会損失が生まれてしまう。「質」と「スピード」は両方重要であるが、まずは質を追求していこう。着実な判断ができるようになったら、徐々にスピードを上げていくのだ。
この判断の「質」を高めるのに重要なのが「判断軸」である。過去の成功体験に引きずられるのではなく、「目的・目標軸」での判断が必要だ。これは過去目線でなく将来目線での判断とも言い換えられる。判断は常に目的・目標の達成に向けられている以上、「目的・目標軸」を持てていることが優れた判断だと言える。
判断の4ステップ
解くべき問題を特定する「認知」に続き、判断は「やることとやらないこと」を決めるプロセスだ。ここも4ステップで具体的に運びをみる。
STEP1 対応方針を立てる
判断の第一段階は対応方針を決めることだ。大局的な視座で方向性を決めることで抜け漏れや偏りを防ぐことができる。認知の段階で掘り下げた真因に対し、それを解消する方向性の対応方針を立てる。例えば問題が「製品単価が競合より低い」であり真因が「価格交渉力の低い小口顧客の開拓が進んでいない」であれば、対応方針は「小口顧客への高単価製品の販売拡大」となる。
STEP2 方針をブレークダウンする
対策方針のままでは概念的すぎて意思決定に繋げられないため、より具体的な「対策案」を抽出する。対策案を抽出するには、対策方針を「どのように(How)」の視点で掘り下げる。このとき「選択の幅を広げる」と「対策案の具体化」という2段階で洗い出すと良い。

STEP3 目的・目標から判断軸を抽出する
「やるかやらないか」の判断をする際に必要なのが判断軸だ。判断軸がハッキリしていれば「なんとなく」という判断のブラックボックス化を防げる。判断軸設定の要点は①目的・目標から判断軸を引き出す、②判断軸に重みを与える、の2点である。
判断が目的・目標の達成のために行われる以上、目的・目標の達成に貢献するか否かが意思決定の正しさとなる。判断軸は複数生まれるのが一般的であるので、これらに重みを付けることが重要だ。要は判断軸に濃淡をつけるのだ。
STEP4 判断軸から実行策を決める
対策案と判断軸が揃えば意思決定のタイミングである。対策案を並べ、それらを判断軸で篩にかけていく。明確な2軸であるのでマトリックスを作成し、判断理由を言語化し切ることまでしたい。
リーダーに求められる高い判断力
人間の知能は流動性知能と結晶性知能とに分けられる。前者は頭の回転の速さ、後者は洞察力の高さ(深さ)を意味する。今回考えた判断に落とし込むと、判断のスピードは流動性知能、判断の質は結晶性知能である。判断の影響力の大きいプロジェクトではスピードより質が求められる。故にリーダーは先ず最初に判断の質が求められる。
リーダーは周りの声をよく聞き、新しい知見を得たり自らのアンコンシャスバイアスを除くことが重要である。しかし皆の意見の共通点を集めた最大公約数的判断は判断の質を低下させ、関係各所からの反論を避けた冗長な判断はスピードが落ちてしまう。判断を行い結果責任を負うのがリーダーである以上、総合的な傾聴と意思決定が求められているのだ。
【参考図書】
戦略コンサルタントが大事にしている 目的ドリブンの思考法
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