ここに書かれることは「目に映る事実」と「平凡な新卒社員の私が持った意見」である。ITコンサル業界は世の中で言われるほど華麗ではなく、またブラックでもない。この連載が業界に足を踏み入れるなり止めるなりの決断の1つの材料になって貰えれば、これ以上の効力感はない。
就職活動前に感じていた不安と焦り
まず前提を少し理解して欲しい。新卒の就職活動において、著者には一般的な大学生と違う点が2つあった。
第一にコミットメント(熱量)である。著者は大学2年生の冬には就職活動を始めていた。選考の早期化が進んでいるとは言え、その中でも比較的早いスタートだった。また膨大な数の企業を受けた。当時使っていたExcelの管理表を見返すと、インターン選考も含め150社以上の選考を受けている。
この背景にあったのは圧倒的な不安である。これは生まれつきの性格であるが、瞬間的な興味には敏感である一方、将来についてはボヤっと考える人間だった。「あと数年で自分の勤める会社を決めなくてはならない。どうやら最初に勤める企業は自分のキャリアに大きく関わってくるらしい」。この考えが自然と就職活動に自分を向かわせていた。著者が将来について初めて真剣に考えた瞬間かも知れないが、結論から言えばこれは回り道であった。これは後述しよう。
第二に外部環境である。所属する組織もあってか、著者の周りには大企業に勤めることが正義であると考える人が多かった。特に総合商社や大手金融機関がこれらの敬慕の頂点に存在し、現にそれらの企業に勤める部活のOBも多かった。
この雰囲気は著者の不安を一層強めた。このままだと周りに流された選択をすることになる。そしてその選択方法が自分を幸せにしないことは直感が感じ取っていた。また、部活時代の儒教的道徳を社会人にまで持ち込むことにも嫌気がさしていた。
就職活動中に大きくなっていった違和感
自分の得意を活かせる仕事が良い。年収だって多いに越したことはない。ここら辺の感覚は一般的な大学生と一緒であった。他者と筆者で大きく違ったのは「安定」への価値観の違いだった。
エピソードから語ろう。50社程度の選考を受けた頃、私は2つの業種にアタリを付け始めた。不動産ディベロッパーとSIerである。どちらも興味のある仕事内容であり、得意を活かせそうな活動が求められた。中でも大手ディベロッパーは平均年収も高かったため、こちらを重点的に受けていた。「得意が活かせそう」という著者の勘は当たり、両業界の選考はスムーズに行った。しかし選考が進み社員の方と接するにつれ、著者は違和感を覚えるようになっていった。
この違和感が「安定」への価値観の違いである。将来がある程度見通せる人生。人生設計ができる環境。そんなの著者はまっぴらごめんだった。少なくとも当時の著者はそう感じた。「近郊に家を買いたい」「子供は3人欲しい」「老後は北海道でカフェを経営したい」。これら全ての考え方が自分にフィットしていない。そんな10年後20年後、下手したら50年後まで描ける人生なら、生きている面白さが低減してしまうではないか、というのが著者の根本にある考え方であった。
一方で若手の育成が弱い会社に勤める度胸も無かった。そんな自分のわがままに対し、いまの会社は唯一応えてくれるように見えた。憧れから欠点が見えてない可能性を見込んだ上で、大学3年生の2月にはいまの会社に入社を決め就職活動を終了した。まだ大学構内にはリクルートスーツを着た就活生が目立っていたが、不思議と不安感は全くなかった。
自分にとってより良い環境へ
著者は勤め先企業を礼賛も卑下もしない。いや、できない。会社のことを評価できるようになるのには2~3年の期間が必要だ。また正確に評価するためには複数社の勤務経験が必要だろう。だが、新卒就活の際の選択自体には今でも納得している。会社のイメージも入社前と変わっていない。
ホッとする一方で、当時の自分の決断に驚くことがある。様々な可能性を捨てて200人規模のファームを選んだのだから、良くそんな決断ができたものだと思う。だが、それこそがキャリアを考えるということである。キャリア設計とは10年20年後の自分のレールを引く作業ではない。現在の自分と社会を深く洞察し、より良い環境に自分を置くことである。と著者は思う。



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