この記事ではMIT Sloan経営大学院助教授のJacquelyn Plessが発表した経済論文”Are ‘Complementary Policies’ Substitutes? Evidence from R&D Subsidies in the UK”(邦題:『「補完的な政策」は代替的?イギリスにおける研究開発補助金からのエビデンス』)の理論分析を日本語で解説していく。(実証分析部分は時間ができたら後日アップするかも)

では早速、内容に移りましょう。
概要・序文
アメリカ政府は補助金と税制優遇措置の両方を用いて、民間の研究開発を助成しています。この論文では、補助金と税制優遇措置の相互依存関係を研究するフレームワークを構築し、資本市場の不完全性を検証します。
理論分析
イノベーション政策としてR&D補助金と税控除の両方を行うべきか判断するためには、これらが補完的なのか代替的なのかを考える必要があります。
※補完的
コーヒーと砂糖、カメラとフイルムのように、片方の需要増加がもう一方の需要に正の効果を与えるもののこと。
※代替的
コーヒーと紅茶、SDカードとフイルムのように、片方の需要増加がもう一方の需要に負の効果を与えるもののこと。ただしSDカードとフイルムが現代に於いても代替的関係があるかは筆者の責任の範囲外である。
研究開発補助金と同税控除を受ける企業iが利潤最大化のために研究開発支出を決定する仮定します。企業の利潤πiは次の式で表現できます。

pは生産物価格、f(Ii)は研究開発投資Iiが影響を与えた生産量(R&Dの結果どれくらい生産量が増えたか)です。C(Ii(ω, η))のωは助成金の現在割引価値、ηは税控除水準のことを指し、全体としてはIiにおける研究開発コストを指します。
また税控除を補助金の関数で表現すると、以下のように表現できます。

このη(ω)を連続的(微分可能)として、補助金の相互依存関係を考えます。
次に、ωとη(ω)が企業の研究開発費用に与える影響を考えます。最適に行動する企業の研究開発資本ストックが1単位変化する変化することによる税引後利益の変化は次のρで表現できます。

δは減価償却率、rは金利、τは企業利潤に応じた法人税、θは減価償却引当金です。
以上より、研究開発費に対する助成金の限界効用は以下のように決定されます。

この式を用いると、以下の仮定が成り立ちます。
仮定1
2つの補助金のタイプが独立している場合、研究開発支出に対する補助金の限界効果は一様に正である。
Δη/Δω=0のとき、研究開発投資費用に対する補助金の効果はΔρ/Δω<0となり、研究開発投資へのインセンティブが増加します。
仮定2
助成金と税控除が代替関係にある場合、研究開発補助金の正の限界効果は減退する。
補助金が代替的である場合(Δη/Δω<0)、ρへの補助金の効果は小さくなり、研究開発投資へのインセンティブが減退します。
仮定3
助成金と税控除が補完関係にある場合、研究開発補助金の正の限界効果は強化される。
補助金が代替的である場合(Δη/Δω>0)、ρへの補助金の効果は大きくなり、研究開発投資へのインセンティブが強化されます。
仮説4
補助金が純補完である場合、補助金全体に対する増加収益が存在する。
補足情報
ちなみに同論文は以下のURLからダウンロードできます。大学等の高等教育機関に所属している(していた)方であれば、機関のメアドで取得できる可能性があります。
https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3379256
また論文の著者のJacquelyn Pless氏のショートトークがMITのYouTubeにアップロードされていますので、参考にされたい方はどうぞ。



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